NIPPON Kichi - 日本吉

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2007/12/20


【信】 Shin Trust, Trustworthiness, Belief

Jp En

 人偏と言をあわせた字体で、この組みあわせでは古文に初めて登場します。
 「言」はすでに甲骨文に見られます。「吉・哲・仁」の字説にもあるように、下の部分は口、祝詞を入れる器の意味です。その上の四つの横線の意味は、常用字体からはわかりにくいのですが、「清」の字説にある文身と刺青文化と関わりがあり、刺青を入れるための取手が付いている針の道具の形を表しています。したがって「言」はただの軽い言葉でなく、祝詞の器の上に針を置き、神への約束・誓願を守れない場合には刺青の罰を受けることを意味します。そこにはもともと神に逆らうという背景があり、人偏が加わると古代社会にあった体罰の一つであった刺青とも位置づけられます。
 一般的な孔子像とは対照的に、白川静先生の説によると孔子は巫女の庶子でありました。神々の世界をあまり話題にしなかった孔子ですが、論語・顔淵第十二などにも基づいて、「信」は社会政治概念になっていきました。日本では古義学の元祖伊藤仁斎(1627-1705)が信の尊さを改めて指摘しました。また、政治に食・兵・信のうちどれが一番大事かと聞かれた孔子は「食が兵より大事だが、民からの信が絶対に欠かせない」という信条を唱えました。確かに、民や個人が信念のために断食することは宗教と政治の戦いによく見られます。
 
■ 信・篆文(てんぶん)
■ 言・甲骨文(こうこつぶん)
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2007/10/15


【仁】 Nin,Jin Humaneness, Benevolence

Jp En

 昔から、中国・越南(現在のベトナム)・韓国・日本などに、広く伝わる東洋思想の代表的な倫理概念です。それは孔子の教えや儒教が広がったからです。この字がまったくの抽象的な概念になる前の経緯が気になります。確かに孔子の時代にはすでに漢字の原点についての詳しい知識が失われていたので、そういう意味では操作・利用しやすい字でもありました。
 「にんべんと二という数字の組み合わせではないか」という俗説がよく聞かれます。「二人の間」から「人間の間の倫理」という意味にまで抽象化され、仁義礼智信という儒教の根本概念の一つになったという説があります。確かに、旧字体はにんべんですが、右の部分の解釈が大事になってきます。
 実は漢字の中に数字がそのままの意味で要素として表現されることはありません。旧字体でない常用漢字の字形に見えても、抽象的なものが漢字の中の要素として表現されるという考えは俗説の特徴です。
 例えば、「悟」に出てくる「五」の部分も数字とは関係がなく、その下の「口」が表す祝詞の器をしっかりと閉めている木製の二重蓋を表しています。また人間二人を示すのには「比」という字などがほかにあります。
 基本的に漢字に出てくる要素は人・物です。古代社会にあったものですから、にんべんの形は人間が座ろうとする時の姿、そして右の部分はその敷物だと考えられます。東洋なので、椅子ではなく、敷物・古代の座布団のようなものです。そのことから仁という抽象倫理概念までのちょっと違う道筋があきらかになります。つまり人に敷物をすすめるという心です。
 まさにホスピタリティー、お客さん・たずねびとへの配慮のような心構えではないでしょうか。本来はそういう温かい気持ちをあらわす概念なのです。
 
■ 仁・金文(きんぶん)
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