NIPPON Kichi - 日本吉

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2008/3/17


【誠】 Sei Sincerity

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 この字は甲骨文や金文にはみられず、篆文から現れます。右と左の部分に分けられるのは確かですが、ただそのためにA+Bという数学的な感覚の解釈に乗り出すのは勇み足です。意味について白川静先生は「誓約を成就する意である」とまとめています。
 「言(ことば)」が「成る(成就・実現する)」という表面的解釈よりもっと、古代中国の社会の在り方に目を向ける必要があります。白川文字学によると「信」の説にあったように「言」の下の部分の「口」は、祝詞を入れる器の意味です。常用字体からはわかりにくいのですが、その上の四本の横線は、刺青を入れるための道具で、取っ手の付いている針の形です。この「言」の部分だけでも神への誓いのことばという意味があります。
 また「成」は戈・矛(ほこ)を作り上げた後、飾りをつけて完成の儀式を行う形です。つまり、この字の左右の部分は宗教的な由来にもとづくものと考えられます。
 
■ 誠・篆文(てんぶん)
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2007/11/19


【哲】 Tetsu Wise, Sagacious

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 この字の上の部分は「折」ですが、旧字形ではかなり違います。
 「斤」は斧の形ですが、「扌」は、手ではないのです。手で斧を使うのは常識ですので、いちいち記す必要はありません。ここでは斧で作られる対象が描かれています。宮島の厳島神社などには、「神梯」とよばれる神が天に陟(のぼ)り降りするときに用いる梯(はしご)があります。中国の聖地にもよくある木製の梯です。「哲」の字の上部の「扌」は神梯であり、斧で神梯を作ることを表します。そして、下部の「口」は祝詞を入れる器であるので、この字は神を迎えるときの心や精神状態を象(かたど)っています。それで、古代から「明らか」、「賢明」という意味がありました。
 王様のことをこの形容詞で表すこともよくありました。同じ意味で祝詞の器「口」の代わりに「心」を置く字体もあり、古い辞書には「敬なり」という意味を説明しています。
 広く東アジアに影響を及ぼし、徳川幕府の政治哲学思想にもなった朱子学は「敬」を指導概念にするもので、この哲の旧字体「悊」の字義に該当します。
 また、これよりも前から吉二つをあわせる異体字の「喆(てつ)」があります。後漢の時代に記された字書『説文解字』に基づいて白川静先生は吉三つからなる「嚞(てつ)」も紹介しています。
 
■ 哲/悊・金文(きんぶん)左
■ 哲・古文(こぶん)右
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【吉】 Kitsu,Kichi Luck, Good Luck

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 小さな鉞(まさかり)つまり「士」を祝詞の器「口」の上に置く形です。今から50年前に、「口」が人体の口ではなく、祝詞の器をあらわすことが白川文字学ではじめて証明されました。
 大きな鉞の頭部を象る「王」という字体からもわかるように、武器である鉞には大変な霊力が宿っていると一般に考えられていました。そして祝詞の器「口」の上に物を置くことは二重の蓋をしていることを表す悟(吾)と同じです。ここでは武士階級の小さな鉞ですが、さらに祈りの効果を上げるために広く人々の行った行動と思われます。そのため、これは軍事のことをも含めて、一般に祝禱(しゅくとう)に用いられます。
 一神教でも神様にお願い事をすることはありますが、東洋の宗教のように願い事の現実化の可能性を問う吉凶判断はありません。神社で御神籤(おみくじ)をひくことがよくありますが、一神教ではそれはまったく考えられません。吉凶判断で人々に人生を反省させるという宗教観は、東洋には本来自分の祈りごとをはっきりとさせるという基本伝統があることを示しているのではないでしょうか。
 
■ 吉・金文(きんぶん)左
■ 吉・甲骨文(こうこつぶん)右
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