NIPPON Kichi - 日本吉

記事数24件: 1~8 件表示     >>     >|  

2008/8/11


【石】 Seki / Ishi Stone

Jp En

 白川文字学が発表されるまで、「石」の「口」の部分は崖の下に転がる石の塊であるというのが定説でした。しかし、甲骨文にみられるように「口」は祝詞を入れるための聖なる器です。「暦」の字説で紹介したように「厂」は険しい崖の形を表し、崖は様々な祭祀と儀式の場として強い霊力の有するところでした。石と霊力の関係を示す文字として、「宕」と「祏」があります。霊廟を表す「宕」は「宀」のもとに「石」があり、位牌の意味の「祏」には「示」偏に「石」があります。こうして祭事関係の字に「石」があることから、石には祭壇の機能もあったかもしれません。
 霊感の強い古代人だけでなく、現在でも自然界の根本的な要素である石には霊が宿りやすいとの理由で、勝手に自然石を家に持っていかないようと注意を諭す人もいます。日本でも御神体として石を祭ることがよく見られます。
 
■ 石・甲骨文(こうこつぶん)
[+ADDRESS] この記事をお気に入りに、追加します



2008/8/7


【掃】 Sou, Haku to sweep

Jp En

 「掃」のもとの字は「婦」と同じ「帚」です。手偏はずっと後に加わりました。最初の甲骨文の形は非常に簡単で、明らかにただの箒(枝箒)の形です。
 甲骨文は、古代の聖職者集団が作ったものですので、このような字となった掃除は神聖な作業として想像しなければなりません。祖先を祀る霊廟で謹んで行われているものでした。現在のように箒で掃くこともありましたが、箒で特に香りのよいお酒を注ぎ、霊廟を祓い清めることが礼儀になっていました。今の線香を焚くようなものでしょう。
 旧字体の「帚」の上部分は「手」を表し、真ん中の線が右側に出ているのは、掃くときに大事な手首の関節を含めた手の部分を示します。しかし、常用漢字の省略字体では、ほとんど指しか残らないことになりました。
 また「帚」は「帰」の旧字体である「歸」にも登場します。これは戦争から帰ってきた軍が、霊廟に祭肉をもって報告する儀式をかたどります。そのときも箒とお酒で霊廟を祓い清める習慣がありました。
 
■ 掃・甲骨文(こうこつぶん)
[+ADDRESS] この記事をお気に入りに、追加します



2008/8/4


【独(獨)】 Doku, Hitori Alone

Jp En

 本来の字は「獨」。「蜀」は牡の獣を表し、「虫」は昆虫ではなく牡の獣の性器をかたどっています。牡の獣はよく群れから離れるため、牡の獣が群れから離れて己の力で毅然と単独で行動する様子から「ひとり」という意味になりました。「獣」偏は、殷や周の時代より後の基本漢字が形成された篆文から加わりました。白川先生の著作によりますと、殷代より漢字圏には、「獣」偏の字を蔑視・差別の表現として他民族や他国に使った長い歴史があることがわかります。日本では、ドイツの統一国家ができる前、幕末の開国時にドイツ語を話す民族を表す文字として「ドク」という読みが本来合わないにもかかわらずその“発音”から「独逸」(略して獨・独)」という字を用いました。他に「度」や「都」といった他の同音の字が使われた記録もありますが、約150年経った今も残っています。しかし、国の名に対して獣偏の当て字は適当ではないかもしれません。白川先生はこれを「日本人の中華思想」と説明し、自分の字書の見出しに国名の使いみちを認めた言及もありません。
 
■独・篆文(てんぶん)
[+ADDRESS] この記事をお気に入りに、追加します




【徳(德)】 Toku, Tadasu Virtue

Jp En

 「徳」の字が表す元の意味は、後世の「徳」の倫理概念ではなく、原始的なアニミズムと呪術の世界へ戻らなければなりません。
 「行」という字は縦横の交差点を象っていますが、「徳」の部首となっている「彳」は、「行」の左半分、つまり分岐を意味します。人が多く通る場所であり霊的に大事なところです。自然にほかのところより事故が多発するので、悪霊をはらう対象にもなります。
 旁(つくり)の横向きの「目」の上部は「蔑」や「省」と同じように呪飾を表しています。「省」はある地域・国に対しての武威をあらわすものですが、「徳」の右上の部分と同じ由来をもち、呪力のある目で見回ることを表しています。特に「徳」の字は、「彳」の要素を持つことから、呪飾の目の威力で行われる巡察の対象が、交差点や分岐にある悪霊であり、それを祓いただすことを示します。
 一般的に旧字体のほうが古代の字体に近いのですが、この「徳」は、旧字体よりも一画少ない常用漢字の字体は金文に近い形です。
 さらに初めて「心」の形が加わったのは、殷から周への革命の直後、西周前期の青銅製の器である「大盂鼎」(盂はこの鼎を使った殷の人の名前)に刻まれた290字の長い銘文で、その時から「徳」の意味するところが、目の呪力より精神的・内面的な方向へ変わりました。
 
■右 徳・甲骨文(こうこつぶん)
■左 徳・金文(きんぶん)
[+ADDRESS] この記事をお気に入りに、追加します



2008/8/1


【暦】 Reki, Koyomi Calendar

Jp En

 この字が「こよみ」という意味を持つようになった由来は「歴」と共通しています。両方ともに軍隊的な背景があり、これは崖の下に行われている表彰式を表します。戦争のときには決戦日が終戦日になることがあります。戦勝時には軍人一人一人の手柄を表彰します。その日が終戦記念日になりました。世の中のどこでも、記念日についての考え方は漢字成立の3000年以前とあまり変わらないようです。
 崖の下はよく祭場になりました。大変強い霊的な場所と考えられたのです。そして崖の下に両禾(りょうか)で門を作ります。「暦」の上の「厤」は、こうしてつくられた門を表します。
 ヨーロッパなどでは、ローマや旧ローマ帝国の町、パリの凱旋門(ラルク・ドゥ・トリオンフ)のように、石からできている建築の形になりますが、基本的に戦争勝利記念の軍門を立てることは他の世界にもありました。
 このように、日付に関係した字なので、「暦」の下の「曰」の部分は日々の日をあらわすとおもわれがちです。しかし、崖の下に両禾で門を作るように、これは神との交信をあらわしているので、これは祝詞の器を表す「曰(えつ)」の意味となります。
 
■暦・金文(きんぶん)
[+ADDRESS] この記事をお気に入りに、追加します



2008/7/10


シュミッツ クリストフ Syumittsu Kurisutofu Dr. Christoph Schmitz

Jp En

 漢字学の巨人・白川静氏が構築した白川文字学の研究者で、哲学思想史・日本思想史研究者。ドイツ・ケルン生まれ。東京都在住。
 ドイツと日本の大学で歴史と哲学、哲学史を基礎に日本思想史を学んでいる時に漢字に興味を抱きはじめる。しかし、西洋の漢字教育では、漢字の形とその意味の関係について充分に説明されないことに、落胆。その後、一九九七年、日本の新聞に載った白川静氏のインタビュー記事を読み、「白川先生の偉業や字書を世界に紹介したい」と考え、ドイツの市民大学などで哲学思想史と漢字を教えた後、白川氏訪問のため二〇〇一年に来日、初めて対面する。二〇〇二年、東大法学部に研究生として入学。
 二〇〇三年一二月、白川静著の漢字入門字典『常用字解』の英訳を始め、ほぼ三年かけて完成。漢字の成り立ちを自然に理解できる漢字学習の基礎づくりをめざしている。
[→より詳しい記事を見たい方はこちら]
[+ADDRESS] この記事をお気に入りに、追加します



2008/3/17


【誠】 Sei Sincerity

Jp En

 この字は甲骨文や金文にはみられず、篆文から現れます。右と左の部分に分けられるのは確かですが、ただそのためにA+Bという数学的な感覚の解釈に乗り出すのは勇み足です。意味について白川静先生は「誓約を成就する意である」とまとめています。
 「言(ことば)」が「成る(成就・実現する)」という表面的解釈よりもっと、古代中国の社会の在り方に目を向ける必要があります。白川文字学によると「信」の説にあったように「言」の下の部分の「口」は、祝詞を入れる器の意味です。常用字体からはわかりにくいのですが、その上の四本の横線は、刺青を入れるための道具で、取っ手の付いている針の形です。この「言」の部分だけでも神への誓いのことばという意味があります。
 また「成」は戈・矛(ほこ)を作り上げた後、飾りをつけて完成の儀式を行う形です。つまり、この字の左右の部分は宗教的な由来にもとづくものと考えられます。
 
■ 誠・篆文(てんぶん)
[+ADDRESS] この記事をお気に入りに、追加します




【気】 Ki Energy, Spirit, Atmosphere

Jp En

 象形文字の气が初文。また、气の初文は乞、雲気の流れる形です。気は空気、天気、湯気、気息などに現れるエネルギーの根本のユニットと考えられます。
 白川先生が最後に執筆した漢字字書『常用字解』に、はじめて「気を養う」という、「気」と「お米」との役割関係が説かれています。ちなみに、韓国のジェーコブ・チャング-ウイ・キム氏の英語の漢字説にもそのように説かれています。
 生き物にエネルギーを与えているのは食べ物であり、食べないと生きていけず、気力がわいてきません。昔から東アジアの基本食はご飯とされており、お米はエネルギーの元でもあります。「気」の上の部分は炊いたお米・ご飯から上がる「湯気」ではないかという、象形的な文字としての位置づけができると考えられます。
 「気」は日本語では人間の気分・気持ちを表現する多くの言い方に使われるようになり、東アジアでは太極拳や合気道などの気息・呼吸法が大事とされる武道の文化の基本にもなりました。
 古代ギリシャ哲学には、とても似ている概念の「プノイマ(空気)」があります。汎神論を唱え、自然の法則に従うライフスタイルをすすめていた古典哲学派のひとつである「ストア派」は、これを「宇宙にどこにもあるロゴス(世界理性)を担っている、一番細かい空気みたいな物資」として考えています。そういう意味では昔から「気」は西東共通の考え方でした。
 
■ 気・篆文(てんぶん)
[+ADDRESS] この記事をお気に入りに、追加します



記事数24件: 1~8 件表示     >>     >|  
NIPPON Kichi - 日本吉 - 日本語に切り替える NIPPON Kichi - 日本吉 - to english

モノ・コト・ミル・ヒトで綴る
日本の美意識。

現在の記事 5444
カテゴリーズ
都道府県
キーワードシャッフル
お気に入り
キーワード検索
閲覧履歴



Linkclub NewsLetter